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リスクは船主・荷主の立場で異なる

 

小島 船の積荷にかける保険は、誰がかけるんですか。
有吉 船主さんのかける保険は相手に弁償する賠償保険、荷主さんの保険は自分の荷物が損害を受けたときのための保険です。重複のようですが、性格が違うものなんです。たとえば荷主さんがかけた保険で支払ったとすると、支払った保険会社は事故の原因如何によっては船主さんに求償できるのです。
保険金を払う立場からすると、発生する危険度が違う。これが専門的でなかなかわかりにくいのですが、人に弁償しなければいけない危険度合いは、事故が起こったときの状況によって違ってくるわけです。荷物を頼む人と頼まれる人の間には事故時の責任についての取り決めがあるので
す。個別に詳細を決める場合もあります。船主の過失の場合もあれば、不可抗力もある。ですから、保険も別な仕組みで出来ており、船主も荷主もそれぞれのリスクを考えて契約できることになります。
ただ支払の場合は調整され両保険からの重複支払はありません。

 

損害保険の展望

 

小島 損害保険は海上以外に何種類ぐらいあるんですか。
有吉 二百種類ぐらいあると思います。よく「ゆりかこからロケットまで」といわれます。
小島 幅広いですね。海の関係でいえば、釣り保険というのもあるんですね。
有吉 それはスポーツ関連の種類の保険ですね。波にさらわれたりする場合もあるでしょう。
小島 それから、漁師さんの網に引っかけてしまうということもありますよね。釣りに行って、岩場ですべってしまった場合にも保険金が支払われるんですか。
有吉 そうです。波にさらわれても、岩場でけがをしても、傷害保険という種目でお支払いするし、他人に迷惑をかけた場合にも賠償保険でお支払いします。このごろ、釣り竿も高価なものがあるから、道具が破損した場合もお支払いすることがあります。釣り保険はこんな補償がセットされているのです。スポーツでは、その他テニス、ゴルフ、スキーなどいろんな保険があります。
小島 最後に、これから損害保険はどういうものが求められ、どうなっていくべきなのでしようか。
有吉 企巣分野と家計分野に分けますと、家計分野では、生保、損保の傷害保険、年金保険、介護保険などがますます必要となってきます。今度の生損保の相互乗り入れは、そういう面で意義があるんです。競争の結果、これからの高齢化社会のニーズに合った商品がたくさんできます。また、そういう努力をしなければいけません。
企業分野の海上保険、特に貨物保険は、昔から自由に保険料を計算していたんです。海上保険以外は、統計的な計算をする算定会というのがあるんですが、その自由度を増そうということになりました、そういうことで、海上保険の考え方が全般的に広がってくるし、高額の損害が予想される分野のニーズが高くなってきますから、リスク判断や事故の予防対策の研究などがますます要求されてくると思います。損害保険の固有の分野はこれからどんどん発展していくし、それに対して我々は努力をしていかなければいけないと思っています。
小島 本日はどうもありがとうございました。

 

 

 

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